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絹本著色慈恩大師像(じおんだいしぞう)


【年代】 平安時代~鎌倉時代
【所在】 国宝館
【指定】 重要文化財
【技法】 絹本着色、掛軸装
【法量】 大乗院(だいじょういん)伝来本:縦242.2cm、横124.2cm
一乗院(いちじょういん)伝来本:縦179.5cm、横80.6cm
【公開情報】 通常非公開
法相宗をはじめられた慈恩大師基(基が本来の名前)の画像です。
基は唐の貞観6年(632)長安に生れ、17歳で出家して玄奘の弟子となり、瑜伽(ゆが)や唯識(ゆいしき)の奥義を極めました。玄奘がインドから持ち帰った法相教学を大成し、『成唯識論』をはじめ多くの訳経や、『成唯識論述記』などの注疏があるところから、百本の疏主・百本の論師と呼ばれ、また、大慈恩寺で研究を積んだために、慈恩大師と称えられます。
天暦5年(951)以来、慈恩大師の忌日である11月13日に厳修される「慈恩会」は、大師の学恩に報謝し、学侶達が法相教学の中心である唯識について問答を通して論義する法会で、古来、興福寺では「維摩会」に次ぐ大会として重んぜられました。
この画像は「慈恩会」の会場正面に懸けられました。大師は身長6尺5寸の偉丈夫で、顔は満月のごとく張り、瞳は雷光のごとく輝いていたと言われるように、堂々として生気あふれる姿態が、長大な画面一杯にゆったりとした構図で描かれます。やや反り身にして両足を開き、左足を少し前に出し、法衣の裾をひろげ、安定した画面です。
大乗院伝来本は平安時代の作で、両足をそろえ、直立した姿勢で動きは少ないですが、現存する慈恩大師の画像のなかで、最も古様をとどめている名品です。
一乗院伝来本は鎌倉時代の作で、左足を前に出し、裾を開いて半身にかまえ、ゆったりとした姿勢を取ります。中世以降の慈恩大師像はこの一乗院本の形式を踏襲するものが最も多く、同系統の善本として重要な作品です。